京都議定書の要点
京都議定書の話題に入りますが、まず簡単にその概要を説明しておきます。京都議定書は1997年に京都で155カ国によって締結された条約です。
(1) 先進国には2008年から2012年での温室効果ガスの排出上限量が数値目標として定められました。
対象の温室ガスとは二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素など6種類のガスで、排出上限量はこれらのガスの合計値。
これは1990年当時の排出を基準として定められました。(ユーロ:7%削減、米国:8%削減、日本:6%削減、ロシア:±0%のままを維持など)。
(2) 開発途上国は今後の経済成長を考慮して排出抑制に配慮するものの、排出制約は負わないこととなりました。
(3) 以上を基本とはするものの、一定のルール下の国際間協力スキームも認める(京都メカニズム)ということとなりました。
この京都メカニズムというのは後で触れますが、排出権取引のことです。
日本のマスコミの無知
朝日新聞の8月27日の社説に「温暖化防止を学ぶ機会に」と題する記事が載りました。地球温暖化の危機を強く訴えているドイツのアンゲラ・メルケル首相の来日を機会にドイツを見習え! というわけです。
社説記事では、
「(ドイツは)20年(2020年)までに再生可能エネルギーの割合を電力供給の20%へ増やし、温暖化排出量を90年比で40%削減する。(中略) これに比べ日本では、12年で終わる京都議定書の削減目標達成に四苦八苦している(後略)」
この記事を書いた記者はいったい自分を何様だと思っているのでしょうか? その後、偉そうな文書が長々と続くのです。この記者は京都議定書の真実と、これまでの日本の努力をどれほど理解しているでしょうか。
しかし、私も2002年ごろ、本誌でアメリカが京都議定書を批准しなかったことを批判しましたので、偉そうなことはいえませんが、それでも環境問題を調べていると京都議定書がどうも怪しい存在であることに気付いてきました。
何しろあのゴア元副大統領が一生懸命推進してきたことですから、具体的には判らないものの、次回の大統領選挙に向けてとか、何か政治的な意図があるのではないかと思えてきます(このゴア氏がオスカーに続きノーベル平和賞受賞ですから、今後益々エネルギー問題はヒートアップして行き、行政によって私たちの税金がほんの一握りの人たちの手に渡って行くことになります)。
そうこうしているうちに、前述した中部大学教授の武田邦彦氏のベストセラーの第二弾「環境問題はなぜウソがまかり通るのか2」が書店で平積みにされているのを見て早速購入しました。そうしたら、京都議定書のいかがわしさがそこに詳しく書いてあるではありませんか。その裏事情の一部が。今日からはこの本も参考にしながらそのことを書いてみます。
何かを求めて知恵を使い、真剣に足を運び努力しているときは、縁ある人や情報が向こうからやってくるものです。そういう生き方をしている人はきっと頷いていただけると思います。だから行動するということが大切なのです。そういう意味からもマスコミの無知は記者クラブ制度のある日本では特に顕著だと思います。
その点では欧米のほうが理性的だと思います。ゴア氏も、映画「不都合な真実」の中では南極の氷が解けることに触れてはいるものの、そのことを大々的に取り上げているのではありません。また北極については氷が解けても海面は上昇しないとハッキリと言っていました。彼はグリーンランドの棚氷に割れ目ができて大きな氷の塊(氷山)として海に落ちることを危惧していました。これによってメキシコ暖流が止まり、ヨーロッパ全域が寒冷地となってしまうというのです(陸地に積もった氷を「氷床」というが、それが滑り落ちて海に突き出したものを「棚氷」という。それが割れたりして海に流れ出て浮かぶテーブル型の氷の塊を「氷山」という)。
それでもゴア氏は60年後には海面が6メートル上がると言いますが、私が調べた日本政府による科学者集団IPCCの報道発表資料では、今後83年から93年後の水位の上昇は少なくて18センチ、最大でも59センチとしていました。この程度の水位の上昇ではほとんどの国は何も起こりません。また、グリーンランドの氷床の縮小が進むものの南極の氷床は22世紀に向けても増えると予測していますのでプラスマイナス・ゼロとも考えられます。それについてそれ以上の具体的な記述はありませんでした。
一方、日本のマスコミは本気で南極の氷が解けて海面が上昇すると思っている節があります。本当に日本のマスコミは何を見ているのでしょうか?
京都議定書にしても、この議定書がいかに日本にとって不公平となっているかに気付くのは、特に専門知識など要らず、どこにでも手に入る公開情報で充分なのです。ですからこの真実を見抜けないということは怠慢か無知か偽善者かのどれかであるわけで、救いようがないわけです。
今月は文書の途中でいろいろなことを書きましたので誌面が無くなってしまいました。別名「不公平・売国議定書」の具体的な記述は次回になります。
― つづく ―
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